言語情報ブログ 語学教育を考える

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その21)

Posted on 2013年8月7日

「ゲリラ豪雨」

 「突然に降り出す豪雨」のことで、正式な気象用語ではないようですが、特に都市に住む日本人には軽視できない異常気象です。時には死者まで出ています。

 

耳の遠い、知ったかぶり老人:なに?“ゲリラ攻撃”だと?ナポレオンもゲリラには悩まされたが、俺も戦争中はゲリラ攻撃には困ったよ。

 

中学生ギャル:朝は天気が良かったので傘を持たずに学校へ行ったから、帰りはひどい目にあった。母ちゃんには、「どうせ傘があっても濡れるのは同じだよ」と言われた。

 

まじめ男子大学生:少し前には、“爆弾低気圧”なんていう言葉が使われました。今度は“ゲリラ豪雨”です。いずれも正式な気象用語ではないのですが、感じは俗語の方がよくわかります。“ゲリラ豪雨”の被害は安倍首相の経済復興の大きな障害になると思います。(この回終り)

「英語教育批評」(その75)(“英語の常識”の再考)

Posted on 2013年7月31日

(1)「英語教育」(大修館書店)の2013年8月号は、「クイズで確認―知っておきたい英語の常識」を特集しています。英語教師にとって、何を、どの程度知っていることが必要かを厳密に決めることは容易なことではありませんが、「この程度は常識ですよ」と示すことは無意味ではないと思います。

 

(2)最初の記事は、町田 健(名古屋大学)「辞書に載っている一番長い単語は?」ですが、「記事全体では、これが“常識”かな?」と疑問に思う人も少なくないのではないでしょうか。私などは、第2次大戦中に旧制の中学生でしたが、2年生の頃、先輩から、「“smiles” が一番長い単語だよ。“s” と“s” の間が1マイルも離れているのだから」と教わったものです。これなどは、どうでもよい冗談話ですが、生徒は結構喜ぶものです。

 

(3)町田氏の記事では、そういう話ではなく、映画『メアリーポピンズ』で使われた34文字の単語(呪文のようなもので無意味)を紹介したり、45文字の医学用語を挙げたりしています。こんな単語を“常識”だと言われても読者としては戸惑うばかりです。もっと中高生にも使えるような“常識”を示して欲しいと思います。

 

(4)田中茂範(慶応大学)「[ 時制・冠詞・動詞の使い分け] an angry Obama と言えるか?」も英語学習の初級者には極めて難しい問題です。最初の例は、遊びに行った子供がやっと帰って来たので、親が「心配していたのよ」と言うような場合の応答として、「ごめん、ずっと公園でサッカーをしていたんだ」と言いたければ、「次のどれが適切でしょう?」という問題になっています。

① Sorry, I was playing soccer in the park.

② Sorry, I’ve been playing soccer in the park.

③ Sorry, I played soccer in the park.

 

(5)田中氏の解説では、② が正解となっていますが、私は① が適切だと思います。子供の年齢にもよりますが、“Sorry I’m late for dinner, Mom. I was playing soccer in the park.” (お母さん、夕飯に遅れてご免なさい。公園でサッカーをしていたので)などと言うでしょう。現在完了進行形では、家に帰ってもサッカーをしているような状況になってしまいます。

 

(6)脇山 怜(元東洋学園大教授)「英語で『電子レンジでチンする』は?」は、英語そのものは決して易しくはないですが、生徒にとっては日常生活で聞いたり、使ったりしている表現だけに、「それを英語で何と言うか」には興味を持つ者が少なくないと思われます。しかも、こういう英語はいつまでも覚えているものです。

 

(7)奥津文夫(和洋女子大名誉教授)「First State とはどの州のこと?」も、生徒が関心を持ちそうな話題を提供しています(正解は Delaware )。「Bill は次の何という名前の愛称でしょうか?」(William/ Benjamin/ Richard)という問題から(正解は William)、英米人の名前の由来を少しずつ学ぶことも意義のあることと思います。以前にも言いましたように、こういう知識は、生徒の興味や関心、学力に応じて、少しずつ与えること、「テストに出すぞ」などと言わないことが大切な配慮です。

 

(8)記事の数が多いので、後は割愛させて頂きますが、音声学、英米文学、などかなり専門分野に属する記事もあります。編集者へのお願いとして、小中レベル、高校レベル、高校大学レベルなどに程度を分類して提供してもらえると、もっと利用しやすい特集になったであろうと考えます。(この回終り)

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その20)

Posted on 2013年7月17日

「熱中症」

異常気象のために、6月初めから猛暑の日が続いて、“熱中症”で倒れる人が多く、命を落とす人までいます。学校の対策はどうなっているのでしょうか?

 

耳の遠い、知ったかぶり老人:なに?“熱中少年”だと。俺も戦時中は戦闘機乗りに憧れた“熱中少年”だった。何事も熱中することは良いもんじゃよ。

 

中学生ギャル:今日は工場見学だったけれど、途中ずいぶん歩かされたので、気分が悪くなって、倒れた人が10人くらいいた。先生は、「マスコミの人に何か聞かれても、知らないと答えろ」だってさ。先生たちはいつもびくびくしているみたい。

 

まじめ女子大生:今、教育実習である高校へ来ています。昨日は猛暑で、運動はしないようにと天気予報で注意していたのに、校内マラソンが行われて、救急車を呼ぶ騒ぎになりました。学校って、こんなに融通性がないところだとは知りませんでした。(この回終り)

「英語教育批評」(その74)(“英語教育環境”の再考)

Posted on 2013年7月12日

「カタカナ語の活用とその弊害」再考

(1)私は持論として、“カタカナ語の氾濫”とか、“妙な英語混じりの歌”などが、英語学習環境を破壊していると主張してきました。しかしながら、そういう要因を法律で禁止することは不可能でしょうし、そんなことをしたならば、弊害のほうが大きいであろうと想像することも出来ます。

 

(2)そういう要因を逆に利用しようとする試みもあったのです。例えば、脇山 怜『和製英語から英語を学ぶ』(新潮社、1985)という本がありました。著者は長年 “Japan Times” の記者でしたが、この本では、新聞のような堅苦しい文体ではなく、ある家庭の親子や夫婦を設定して、その会話の中から和製英語をどのように言い換えたなら英語として通じるかを示してくれています。現在でもよく使われる“イメージチェンジ”(“イメチェン”とも)、“オープン戦”、“エンスト”、“カンニング”など500項目以上を解説してあります。

 

(3)カタカナは外来語を表記するには便利ですから、排除することだけを考えるのではなく、節度を持って利用していけば、英語学習者を指導する場合でも役に立つことは確かでしょう。教室では生徒のよく知っている芸能人の話などにかこつけて、正しい英語の言い方を紹介すれば、英語嫌いの生徒も興味を示してくれる可能性があります。

 

(4)例えば、“カンニング竹山”という芸能人がいます。私も彼の芸名の由来は知りませんが, 一時は、“すぐに切れて怒鳴る芸能人”として有名でしたが、俳優や雑誌のコラムニストとしても活躍していますから、多彩な能力の持ち主で、努力家でもあるのでしょう。TBSのラジオでは、政治問題もコメントをしていたことがあります。この芸名から、“カンニング”はそのまま英語にすると“cunning” で、“ずる賢い”という意味しかないことから、“cheating”という英語を教えることが出来るはずです。

 

(5)その“カンニング竹山”がある番組で、「自分は酒が大好きで毎晩飲み過ぎるので、翌朝は何キロかランニングをして、時間のある時はサウナへ行って汗を流す」と語っていました。その番組は、専門医たちによる芸能人たちの健康診断をする番組でしたから、カンニング竹山は、「すぐに止めないと命を落とす」と“ドクターストップ”をかけられてしまいました(もっとも、これはテレビ番組制作者による“やらせ番組”のように私は感じました)。ある意味で、芸能人たちは命がけで芸を売っているのです。そんな番組が多いことは視聴者も反省しなければならないと思います。

 

(6)英語嫌いの生徒でも関心を持ちそうな話題で毎時間1つでも、英語を教えるとすると、生徒はすぐに「それはテストに出ますか?」といった質問をするものです。私ならば、「テストとは関係ないよ」と答えたいですが、その判断は、日頃の指導方針と関係がありますから、一概には言えないと思います。

 

(7)最後に、脇山 怜氏の示している英語を記しておきます(ただし要約)。① “イメージチェンジをする”文字通りには、 “to change my image” ですが、髪型を変えたりする場合は、“I had a haircut just for a change.”などが良い。② “オープン戦”は、プロ野球で正式なリーグ戦が始まる前の“練習試合”のことですが、英語では、“an exhibition game”。③ “エンスト”は、たまに “My car’s engine stopped.” と言う人もいますが、“My car’s engine stalled/ died.” などが普通。

 

(8)言葉は複雑で、一筋縄ではいきません。英語教師は常に視野を広くして、様々な情報を身につけるように努力しなければなりません。その上で、「教え方」も学ばなければいけないという大変な職業であることを自覚しなければならないのです。(この回終り)

 

浅野式現代でたらめ用語辞典(再開その19)

Posted on 2013年7月3日

「クールジャパン」

日本の文化面の良いところを世界に宣伝しようと、通産省がイギリスの言い方を真似して使い出した言葉。

知ったかぶり老人:おれだって、“クール”が、“涼しい”ということぐらい知っとるぞ。“クール日本”だと?日本が熱帯地域になろうとしている時に、何を言っとるんじゃ。

中学生ギャル:英語の先生から、“cool”には、“かっこいい”という意味があることを教わったよ。だから、“クールジャパン”は、“かっこいい日本”だよね。でも今の日本にかっこいいとこなんてあるのかなー?

まじめ女子大生:去年の夏休みに、3週間ほどニューヨーク州の東部にある小さな町でホームステーをしました。町の人は、今でも日本では刀を持ったサムライが通りを歩いていると思っているようでした。でも私も他人のことは笑えないと思いました。日本のことを質問されても満足に答えられなかったからです。日本の学校教育は一体なにを教えている処なのでしょうか?(この回終り)