言語情報ブログ 語学教育を考える

「教え育む」教育と「能力を引出す」教育の背景

Posted on 2009年11月30日

日本の教育も,もう少し「問題追及型」に転換すればいいんじゃないの,といった簡単なことでは済まないようです。

教育についての意識の違いがあります。日本では親は「やればできる」と思っています。ほら頑張らないから,見てみなさい,と言います。できない子は「怠けているから」と決めつけられます。できる子はすべての科目において当然優秀だと思っています。ですから愚痴ばかり多くなります。

アメリカの場合は「個人個人はそれぞれ別」という観点で自分の個性を確かめ,個性を確立していくことが学習であり,その個性が評価されて進学し,就職します。学科の点数については親はたいていの場合平然としています。ですから,マイナス志向の愚痴は少なくなります。

大学も異なった個性を集める努力をします。
例えば,ハーバード大学は,学生を各州から選抜し,外国からも入れるようにしています。同じ地区,同じ高校に偏らないように注意しています。ですから,進学率の低い地方の出身者は
それだけハンデをもらえるわけです。

先生も日米で明らかに違います。あるアンケート調査によれば,日米両方で教育を受けた人々が日米の教育の最も異なる点とした2項目は,
1)独創性,創造性に富んだ思考ができるような教え方をしている。(日1.4%, 米51.9%)
2)一人ひとりの能力・個性を引き出すような教え方をしている。(日1.2%, 米49.1%)
この2つです。帰国子女の意識の偏りを多少マイナスしても(日本のパーセントを10倍にしても),まだ大きな相違がありますね。

同じ調査で,日米の教員は生徒から次のような評価を受けています。
1)科目についての知識がある(日24.4%,米14.3%)
2)生徒に強い関心がある(日8.6%,米49.0%)
  生徒にうちとける(日5.9%,米56.3%)
  やる気を出させる(日7.3%,47.5%)

これで見ると,私たちとしても,生徒のやる気をそいでいるのは,親であり,教師であるとの反省も必要でしょう。
アメリカの場合,科目の知識よりも生徒とともに勉強していくといった教師の態度が高く評価されるようです。
(日本青少年研究所「徳性に関する調査」1992.千石保『日本の高校生 国際比較でみる』(NHK Books))
(村田 年)

浅野式辞典:「もんすたーぺあれんと」(モンスターペアレント)

Posted on 2009年11月27日

 この「怪物のような親」は、払えるのに子供の給食費を払わなかったり、学校の成績や教え方に文句をつけたりして存在感を示してきた。しかし、鳩山首相の母親についての報道によって、影が薄くなってしまった。首相の母親は、5年間に9億円という“お小遣い”を与えていたという超怪物的な親らしい

日本人の学習形態を変えたらどうでしょう?7

Posted on 2009年11月27日

「電子辞書」から「紙の辞書」へ
大人の場合をみると,今まで「広辞苑」などをめったに引いたことのなかった人でも手元に電子辞書があると,ちょっと確かめてみようという気になりますね。また,英語,国語,理科・社会の参考書,問題集など20あるいは30以上もの辞書・参考書が入っていて便利です。これをいろいろ参照すると,先へ先へと想像の輪が広がります。

しかし,電子辞書の場合,そのときはためになった,勉強になったと思ってもすぐに忘れてしまうこともあります。ここで,生徒の英語学習を考えてみると,紙の辞書の有効性は確かにあります。まず辞書を引いて目指す語に行きつくまで時間がかかります。いろんな見出し語を見ることになります。引いた語の全体が眺められます。線を引いたり,色づけしたりできます。落ち着いて眺めたり読んだり,ノートに書き写したりできます。辞書が汚れてきます。引くのが速くなったのに気がつきます。記憶に定着し,思わぬ知識も増え,自分が友達のだれよりもよく理解できたという気分になったりします。

★ひとつの方向として,まずは電子辞書に慣れ,それから紙の辞書へという手があります。★

★次回ではさらに,この問題追及型学習と生活学習について考えてみます。★  (村田 年)

浅野:英語教育批評:「鳩山論文」と英語のこと――「英語教育」

Posted on 2009年11月24日

12月号の記事に関連して――
(1)「英語教育」(大修館書店)2009年12月号の「英語教育時評」の筆者は鳥飼玖美子氏で、「鳩山論文から考える――使える英語とは何か?」と題してある。
 前半は、「電子黒板」のことに関連して、限られたテレビ報道の映像ではコメントしにくいが、と断りながらも、鳩山首相にその効果を説明する場面で、教師が画面を指しながら、”Banana! Banana! OK?” と教えているのでは、この機器に膨大な税金を投入する意味がないことを述べている。電子黒板については、私のブログでも前に論じたことがあるので、ここではこれ以上は触れないでおきたい。
(2)「鳩山論文」とその米国での反響については、鳥飼氏自身も朝日新聞(9月17日付)で詳しく論じられたし、インターネット上でも、読みきれないほどの賛否両論があふれている。しかしながら、鳥飼氏が「英語教育」誌の原稿を書かれたのが、十月初旬とのことで、その後の1ヶ月の間の鳩山首相の変節ぶりを見れば、この問題をまともに論じる意味はほとんどなくなったと私は考えたい。
(3)鳥飼氏が提起しておられる2つの問題、「英米人に理解されるための発想や論理のあり方」と「世界の英語たち(World Englishes)の時代に、どのような“使える英語”を日本人が目指すべきか」という問題提起は重く受け止めたいと思う。
(4)この号では「英語教師のために今日から役立つブックガイド」を特集している。「教育の今を知りたい」という教育問題の基本を論じたものから始まって、指導法、教材、時事問題など、英語教師として知っていることが望ましい書物が紹介されている。一般的な書評でもそうだが、選ぶ基準は、批評者や編集者の主観に依存するから、「こういう本が取り上げられていない」と文句を言うつもりはない。ただし、特集のタイトルの「今日から役立つ」は少し性急過ぎるように思う。よく読んで、考えてから実践に移すべきテーマも多いと思うからだ。
(5)「2009年にアメリカで話題になっている本を知りたい」「読んでおくべき『オバマ本』を知りたい」などのタイトルもあるが、時宜を得たものという反面、アメリカに偏り過ぎるのは問題であろう。鳥飼氏の記事ともよく読み合わせておきたい。
特集記事の最後には1ページを使って、紹介された書物の一覧表があるのは親切だが、出来れば「英語教育」誌上で書評に取り上げられたものがわかるとなおよかったと思う。(浅 野 博)

日本人の学習形態を変えたらどうでしょう?6

Posted on 2009年11月24日

問題追及型学習の道具としての辞書 ― 特に電子辞書
赤ちゃんは何でもつかみ,口にくわえてみる。ことばを覚えると,盛んにお母さんに質問する。好奇心のかたまりなのです。ここでお母さんが「うるさいわね!そんなこと当たり前でしょ!」などと言ってはいけません。このとき子供を「ばか」呼ばわりなどすれば,才能の芽をいくつか摘み取ってしまうわけですね。親だって何でも知っているわけではないから,本や辞書を使っていっしょに調べるようにしたいものです。

その際役に立つ道具として,参考書,辞書,パソコンなどいろいろあるが,最も簡便なものとして電子辞書がいいでしょう。紙の辞書でもいいが,引いたカタカナ語が出てなくて,もう1冊辞書を取ってくるのはおっくうで,あとにしようと思ったらもうだめです。

電子辞書ですと,小中学生用の国語辞典になければ,大辞典へ,なければカタカナ語辞典へ,百科事典へとすぐに飛ぶことができます。「広辞苑」や「大辞泉」に気軽に行ける。辞書を引くのが全然億劫でなくなる。これが最大の利点でしょう。 (村田 年)