言語情報ブログ 語学教育を考える

論文は英語で書く― 世界で勝負する―湯川秀樹に学ぶ(2)

Posted on 2010年2月19日

*湯川は最初の論文からすべて(ドイツ語,スペイン語の2点を除き)英語で書いている。世界の研究者がこれを読み,反応してくる。最初から最後まで世界を舞台に勝負した。

*論文は英語で書いた方が引用回数は多い。ノーベル賞を取った「小林・益川論文」は2008年時点で5480回引用されているという。(有名になった,「CP対称性の破れ」という現象は、クォークが最低でも6種類なければ起きない,との仮説の説明はほんの0.5ページしかないのに。)

*私たちの英語・英文学・英語教育の世界では,生成文法が湯川の時代の理論物理と似ている。誕生したばかりで基礎知識はそれほど必要ではなく,当面の問題についての論文をすべて読み,とことん議論して考え,論文に仕上げ,世界の研究者にぶつけて反応を見る。それゆえ生成文法では英語で書かないことには問題にならない。言語教育とは直接はからんでこないので,啓蒙的に書く必要もない。

*しかし,私たちの日英語の比較・対照研究などはすぐに英語教育とからんでくる。よって,日本の英語教育の特殊性をも考え,日本人研究者に向けて書くといった状況も確かに多く見られる。しかしながら,それに少しでも普遍性を持たせ,アジア諸国の外国語教育へ,世界の外国語教育へとつなげていく努力が必要であろう。

★応用言語学や英語教育の論文も,できるだけ日本と言う現場を超えて,アジアに,世界に,英語を用いてつないでいくべきであろう★ 
(村田 年)

自律学習と創造性の発現(発揮)―湯川秀樹に学ぶ(2)

Posted on 2010年2月18日

*進学や就職といった他律的な理由づけで勉強するのも仕方がないが,できれば「物事への疑問」や「知りたい欲求」といった自律的な動機で勉強してほしいと湯川は若い人たちに望んでいる。
*湯川は「創造性」を特に尊重し,「創造性の発現(発揮)」ということばをよく使っている。疑問に思い,何度も何度も考えることが発見につながり,自らの内的世界の形成に役立ち,独自の「創造性」につながっていく。長生きして,このへんをもっと若い人に話したかったであろう。

★他律的な理由でなく,自律的な動機で勉強したい★
★その人自身の独自の「創造性」につながるよう努力したい★
(村田 年)

独学の利点―湯川秀樹に学ぶ(2)

Posted on 2010年2月17日

*勉強は適当な指導者から習った方がよいが,独学の効用もある。先生がいないと無鉄砲なほどの冒険ができる。湯川は最初の論文で一流の研究者に立ち向かった。一方,指導者を得た朝永は先生が考えだすテーマをひとつずつこなしていった。朝永は先にある程度の業績を上げていき,湯川は後れを取ったが,あるとき一大飛躍をした。
*発展途上の矛盾と混乱を抱えた分野で,暗中模索に明け暮れたが,それがかえって湯川にとって刺激,魅力となった。何物にも代えがたいほどの動機付けとなった。

★適当な指導者がいた方がいいが,独学もときに大きな飛躍につながる★
★問題の矛盾と混乱がかえって大きな魅力・動機付けとなることもある★
(村田 年)

授業は楽しく,わかりやすく―湯川秀樹に学ぶ(2)

Posted on 2010年2月16日

*昭和10年当時,日本の大学・高校・中学では,先生は偉く,学科の内容も謹んでうけたまわるべきものであった。深遠で,なんだかわからないところに価値があり,つまらぬ質問など受けつけないところがあった。ところが,招聘したヨーロッパからの一流の理論物理学者はスライドを使ったり,実物を持ってきて,目の前で実演し,楽しくわからせようと努めた。また話の途中でも質問を認めた。愚問であってもにこやかに歓迎された。学生たちには大きな驚きであった。

*講義,講演は聞ける限り聞く。湯川は数学の講義は聞ける限り聞いた。講師になってからも高木貞治の講義などを聴講している。
*本は薄くて,美しいのがいい。厚い本はなかなか買う気にもならず,読むのもたいへんなので,薄い方がよい。また,美しい装丁の本は読みたくなるし,大事にしている。
*先生にアジられると夢中になる。先生が自身の研究を,現在の学会の中心課題を高揚して学生に話すのはよい。先生にあおられると,ついつい学生も燃えてくる。

★授業はわかりやすく,楽しく★
★講義・講演は聞ける限り聞く★
★本は,もちろん内容だが,薄くて美しいのが良い★
★学生はアジられると,困難に立ち向かう気になる★
(村田 年)

浅野式辞典:「せんりゅう」(川柳)

Posted on 2010年2月15日

一流になれない詩人が、千流になってもと作った俳句が起源。「でたらめ辞典」選の時事川柳3首;
A:スペシャルと称して薄める3時間(民放テレビの特別番組。長いだけで、水で薄めた日本酒のように味気ない)
B:鳩の山餌もらうなと突っつかれ(親から巨額のお小遣いをもらった首相だが、豆鉄砲をくらった顔をして耐えている)
C:横綱に朝、昇竜し夕に去る(出世の早かった横綱も、暴力事件で角界を去ったが、功労金などで晴れ晴れとしている)